財界の暴君に契約妻として囲われました ~初恋を拗らせた大富豪に、一途に愛されています~

 言いたいことだけ言い終えると、愛華さんはリップスティックをバッグに戻し、颯爽と化粧室を後にした。
 愛華さんの言葉に衝撃を受けた私は、しばらく放心状態に陥った。

 静まり返る化粧室内に無機質な空調音が反響し、我に返った私は、胸の奥がスーッと冷えていくのを感じた。
 鏡に映る自分を見つめ、惺也くんが酔い潰れて帰宅した日のことを思い出す。

 ──『マリー』
 惺也くんが寝言で口にした名前。夢の中でも逢瀬を重ねる、本命の女性。

 契約結婚の申し出をされた時から、なんとなく別に好きな人がいることはわかっていた。
 相手の女性との関係が公にできないから、カモフラージュする意味で私と結婚したのだと、理解していたから……。
 てっきり既婚女性か、シングルマザーのような人かと思っていたのだけれど、……財閥の令嬢がお相手だったなんて。

 でも、愛華さんなら、何も問題ない気がする。
 私の知らない何かがあるのかな……。
 
 胸の奥がずしんと重く沈んでいくの感じていた。