朝日有希の本当の名前を、僕はまだ知らない

それから僕は家族にも全てを秘密にした。
チームメイトにも成長痛だと嘘をついて、紹介状は破って捨てた。



あっという間に日々は過ぎて、夏がやってきた。

夏休み中は毎日練習があるし、無理だとしても全員が全国大会出場を夢見て動いている。



「湊月先輩、明日の試合、応援に行きますね」



「新……僕が1年の時はもうレギュラー入ってたぞ?」



「煽らないでくださいよぉ。今年の1年、全国出てたり無駄に経験者多くて控えにしか入れなかったんです」



「仕方ないな。明日の大会終わったら、朝練特訓するか」



「マジっすか!!」



「マジだ。約束」



僕は腕を新とぶつけ合った。

男の約束。



翌日、試合の日。

全国の前に全道大会にでられるかどうかの分かれ目だ。

そして、その朝に僕は異様に調子が良かった。

痛みがほぼゼロで、こんなことは足が痛み始めてから初めてだった。



「神様ってちゃんといるな」



思わずそう呟いてニヤニヤしてる自分がいた。



ピー!!

試合開始のホイッスルが鳴る。



「湊月先輩ー!! ファイトー!!」



新の声が聴こえる。

観客席では、家族も見てる。

密かに気になってる他クラスの女子も見つけた。

やってやる!



「湊月ーー!!!」



仲間からパスされたボールを受け取り、僕は思いっきりジャンプしてダンクでゴールを決めた。



ーーそして、それが最後だった。



「ーーいってぇ……」



足が痛い。もう痛いとかじゃない。

まるでネジ切れて、触っても感覚がないくらいに激しく痛い。

冷や汗が出てきて、僕はその場に崩れ落ちた。

焦るチームメイト。

新も近付いて、心配そうに手を握っている。



「おい、手を握るとか恋人じゃねぇんだから」



「先輩……そんなのどうでもいいんです。無理しないでください」



「大丈夫。すぐ帰ってくるよ」



こうやって必要としてくれる後輩がいる。チームメイトがいる。家族がいる。ちょっと気になってる女子だっている。



だから、こんなの何でもない。
僕は大丈夫だ。