朝日有希の本当の名前を、僕はまだ知らない

茜さんの車に乗って、僕たちは病院へ戻った。

「青春はできたー?」

「できた……気がします」

有希は黙り込んでいた。

「今度写真シェアしますね、先輩」

「新ありがとう。茜さんもありがとう」

「いいのよ、でもしばらく病院抜け出すのはやめなさい。そろそろバレるよ」

「ですね、そうしようと思います」

「有希ちゃん、制服ピッタリだったね」

「……ありがとうございました」

「有希ちゃんもこの辺の人なら、その制服着ていつか通学するのかもね? 今は不登校でも、あの学校には湊月も新もいるよ」

「そうですね……いつか」

病院に着くと、僕たちは何事も無かったかのように分かれた。

有希には「また明日」と手を振り、

新には「また今度」と抱き合った。

今回もバレずに戻って来れた病院だが、僕はまっすぐ主治医の診察室に向かった。


5話・[完]