朝日有希の本当の名前を、僕はまだ知らない

始めから全ての治療を拒否した。
両親は泣いていた。
治療を受ければ、まだ生きていける可能性はあるのに、と。

「両足または片足の切断が必要になります」

僕にとって、バスケは特段特別なものでは無いけど、僕にとって、バスケは生活の全てだった。

矛盾してるかもしれないけど、それが本心だ。

だから治療を拒否し続けた。


ーーでも。

有希とバスケをして、だらしない姿を晒してでもまだバスケをしたい自分を見つけた。

「有希、バスケを続けるには、足を切断するしかないんだ」

「そんなのって、そんなのってないよ!」

有希は珍しく、悔しそうに言った。
いつも飄々として、なんでもないって顔してるのに。

「それでも、有希はここに僕を連れてきてくれた」

「私は楽しかったよ」

「僕も、楽しかった。だから、手術受けるよ」

「湊月……」

「もし手術が成功したら、この間の返事をちょうだい」

「ずるいよ……わかった。だから湊月は生きて。一生懸命に」

「うん、約束する」

2人で指切りした。
制服で、青春で、2人きりで。


「好きだよ、有希」



無言の涙だけが返ってきた。