朝日有希の本当の名前を、僕はまだ知らない

翌日の9時半、茜さんの車に乗って僕たちはまた病院を抜け出した。
前回と同じ、リハビリに行くような雰囲気を出したら直ぐに抜け出せた。

「着替え、持ってきたわよ。湊月くんの分は?」

「病室に一応ありました。運ばれて来た時学校にいたんで」

「そう、じゃあ向こうで着替えられるわね」

「茜さん……ありがとう」

「有希ちゃん、お礼とか言えるんだ」

「し、失礼です!」

「まぁまぁ姉ちゃん、俺たちの青春を応援してくれてありがとうな。ね、先輩」

「青春ってなんだよ」

学校に着く前に、コンビニによって、僕たちは着替えた。

僕にはパッとしないいつもの制服だったけど、有希のセーラー服は信じられないくらい似合っていた。

ひとつにまとめた髪が風に揺れてまるで奇跡のように輝いていた。

「そろそろ行くか」

「うんっ」

こういう時可愛いと言えない自分がもどかしかった。

学校に着くと、10時。僕たちは悪びれもなくインターホンを押した。
日曜日だったから警備員くらいしかいない。

僕たちは学校に忘れ物をしたから、ちょっと入らせて欲しいと言ったら簡単にOKしてくれた。

「有希、どこへ行きたい?」

「湊月の教室」

「その前に俺写真撮りますよ」

「いいね、新くん、お願い」

珍しくノリノリの有希と校門前で写真を撮った。
ツーショット。

「ほらほら、あたしが撮るから3人でも」

茜さんがカメラを構えて三人でも撮った。

入学式でも撮らなかったのに、なんだか不思議な感じがした。