その空気を見ていた奈津は、小さく笑う。

……分かりやすいな。

悠真は昔からそうだった。

言いたいことがある時ほど、言葉にできない。

奈津は一歩前へ出ると、莉麻へ声をかけた。

奈津「莉麻ちゃん。」

莉麻が振り向く。

奈津「今日は本当にありがとな。」

深く頭を下げる。

リーダーとしてじゃない。

悠真の仲間として。

心からの感謝だった。

莉麻は慌てて首を横に振る。

莉麻「そんな、頭を上げてください。私は本当に何もしてないです。」

その言葉に奈津は笑う。

奈津「いや。お前が思ってる以上に助けられた。」

悠真だけじゃない。

俺たちも。

その言葉は胸の中へしまったまま、奈津は優しく微笑んだ。

そのやり取りを見ていた春空も、一歩前へ出る。

春空「俺からも。」

少し照れくさそうに笑う。

春空「ありがとう。」

まっすぐな笑顔だった。

莉麻も自然と笑い返す。

莉麻「こちらこそ。皆さんに会えてよかったです。」

その笑顔に、春空の胸はまた小さく高鳴る。

そして悠真は、その笑顔を見つめながら静かに思う。

――やっぱり。

帰ってほしくない。

その気持ちは、少しずつ確かなものへ変わり始めていた。