莉麻は少しだけ驚いたあと、小さく笑った。
莉麻「熱中症の日に、偶然会ったんです。」
その日あった出来事を、一つずつ話していく。
炎天下で悠真を見つけたこと。
日陰で休ませたこと。
家まで送ったこと。
看病をしていたら、自分まで眠ってしまったこと。
奈津は静かに聞いていた。
そして、小さく笑う。
奈津「なるほどな。悠真が言ってた。」
『助けてもらった子がいる。』
『気づいたら、その子を信じてた。』
奈津「莉麻ちゃんだったのか。」
そう呟きながら、もう一度莉麻を見る。
悠真の話をするたびに。
莉麻は本当に嬉しそうに笑う。
その笑顔は、さっきまで見ていた大人しい雰囲気とは少し違っていた。
目尻がふわっと下がって。
優しくて。
……可愛いな。
思わずそんなことを考えてしまい、奈津は心の中で苦笑する。
綺麗だと思った。
でも笑うと、もっと可愛い。
しかも悠真はこんなにも安心して眠っている。
……この子一体どんな子なんだろう。
奈津は静かに窓の外へ視線を向ける。
夜の街並みが流れていく。
病院までは、もう少し。
けれど今日という一日は、きっとここからまた何かが変わり始める。
そんな予感だけが、車内に静かに流れていた。



