視線を上げると目の前には莉麻がいた。

心配そうに見つめているのに、その瞳はどこまでも穏やかだった。

急かさない。

「どうするんですか」と責めることもしない。

ただ、悠真が決めるのを待っている。

……不思議だ。

会ったばかりなのにどうしてこんなに安心するんだろう。

こんな人、今までいたかな。

ファンだって言ってたのに。

俺じゃなくて、一人の人間として接してくれる。

だからかな?この子ならってそう思えた。

悠真「……お願いがあるんだけど。」

莉麻「はい。」

返事は優しかった。

悠真「家まで……送ってくれない?」

一瞬だけ莉麻は驚いたように目を丸くした。

でも、すぐにふわっと笑う。

莉麻「もちろんです。」

その笑顔を見て、肩の力が少し抜けた。

悠真「あと……。」

言葉が途切れる。

こんなお願い、初対面の人にするなんて。

普通なら絶対しない。

でも、今は。

悠真「歩くの……少しきつくて、体支えてくれない?」

少し照れくさそうに目を逸らす悠真を見て、莉麻は小さく頷いた。

莉麻「任せてください。」

その一言だけで。

「大丈夫ですよ」と言われた気がした。

悠真はゆっくり立ち上がる。

少しふらついた体を、莉麻がそっと支えた。

触れた腕は驚くほど細くて。

それなのに、不思議なくらい安心できた。