「莉麻ちゃん。」

自分の名前を呼ばれた瞬間。

莉麻の足は、考えるより先に動いていた。

莉麻「悠真くん!」

人目なんて気にならなかった。

さっきまでサイン会で笑っていた悠真が、今は帽子を深くかぶり、どこか苦しそうに立っている。

近づくたび、その表情がはっきり見えてくる。

……やっぱり。

顔色が悪い。

帽子のつばの下から覗く額には汗が滲み、呼吸も少し荒い。

それでも悠真は、莉麻を見ると安心したように笑った。

悠真「……まだ、いたんだ。」

その笑顔が、あまりにも弱々しくて。

莉麻の胸が締めつけられる。

莉麻「悠真くんこそ……全然、大丈夫じゃないじゃないですか。」

責めるつもりなんてなかった。

でも、心配で仕方なかった。

悠真は困ったように笑う。

悠真
「ごめん。ちょっと……無理しちゃった。」

その声には、もうサイン会で見せていた元気は残っていなかった。