「次の方どうぞ。」

スタッフの声が聞こえる。

莉麻は小さく息を吸った。

……私だ。

ゆっくり悠真の前へ座る。

サインを書くために下を向いていた悠真が、顔を上げる。

目が合った。

その瞬間悠真の目が大きく見開かれる。

驚いたように。

でも、すぐに嬉しそうに柔らかく笑った。

悠真「……莉麻ちゃん。」

その一言だけで、胸がいっぱいになる。

覚えてくれてた。

忘れてなかった。

それだけで十分だった。

莉麻「こんにちは。」

自然と笑顔になる。

悠真はサインを書きながら、小さく笑う。

悠真「来てくれたんだ。」

莉麻「はい。元気になったかなって。」

その言葉を飲み込みながら頷く。

でも近くで見ると、やっぱり分かった。

顔色が白い。

笑っているのに、目の奥に疲れが残っている。

あの日と同じ。

無理して笑っている悠真だった。

胸がぎゅっと締めつけられる。

どうしよう。

心配。

すごく、心配。

でも今は私だけの時間じゃない。

後ろには次の人が待っている。

だから、長くは話せない。

そのもどかしさだけが、胸に残っていた。