サインを書き続ける悠真は、ふと小さく息を吐いた。
……きつい。
笑顔は作れる。
会話もできる。
でも体が少しずつ重くなっていく。
額を伝う汗を拭う暇もない。
その様子に気づいた春空が、隣から小さく声をかける。
春空「悠真、大丈夫?」
悠真「うん。」
笑って返す。
その返事を聞いても、春空の表情は晴れなかった。
そこへ、少し離れた席から陽が身を乗り出す。
陽「悠真、めっちゃ汗かいてるじゃん!顔色も悪いぞ?」
周りのファンに聞こえないくらいの小さな声。
悠真は苦笑しながら首を横に振る。
悠真「疲れてるだけ。サイン会終わったら休むから。」
そう言って次のファンへ笑顔を向ける。
その横顔を見た奈津は、小さく眉をひそめた。
……また無理してる。
でも今ここで止めたら、悠真はもっと気にする。
だから奈津は何も言えなかった。
ただ、いつでも動けるように悠真の様子だけは見続けていた。



