病室には、静かな時間が流れていた。

悠真はまだ莉麻の手を握っている。

さっきまで泣いていた目元には、少し赤みが残っていた。

そんな悠真を見つめながら、莉麻は胸の奥で何度も言葉を繰り返す。

――今なら言える。

怖くない。

もう、迷わない。

莉麻は小さく息を吸った。

莉麻「……悠真くん」

悠真「ん?」

莉麻「この前の……返事」

悠真の表情が止まる。

「特別な存在になりたい」と言ってくれた、あの日のこと。

悠真は一瞬だけ緊張したように、握っていた手に力を込めた。

悠真「……うん」

莉麻はそんな悠真を見て、柔らかく笑った。

莉麻「今、言ってもいい?」

悠真「……うん」

その返事を聞いて、莉麻はゆっくり口を開く。

莉麻「私もね……悠真くんは、特別だよ」

悠真の瞳が揺れる。

莉麻「ずっと、悠真くんのことは大切だった。でも……最近、それだけじゃないって分かったの」

少しだけ頬が熱くなる。

それでも、ちゃんと悠真を見る。

莉麻「悠真くんが笑ってると嬉しいし、そばにいると安心する。悠真くんが誰かと仲良くしてると……ちょっと寂しくなる」

悠真の目に、少しずつ涙が浮かんでいく。

そして莉麻は、最後の言葉をゆっくり伝えた。

莉麻「……私、悠真くんが好き」

その瞬間悠真の目から、涙が一粒こぼれた。

けれど、泣きながら笑っている。

悠真「……ほんと?」

莉麻「うん。本当」

悠真は握っていた莉麻の手を、壊さないように大切に包み込む。

悠真「……俺も、莉麻ちゃんが好き」

二人の視線が重なる。

ずっと曖昧だった二人の距離が――

今、初めて「好き」という言葉で繋がった。