遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。

その音が近づくにつれて、スタジオの空気もさらに緊張していく。

スタッフが周囲を整理する中、悠真はずっと莉麻の手を握っていた。

離すことができなかった。

悠真「……莉麻ちゃん」

莉麻「ん……?」

悠真「俺、怖かった」

その言葉に、莉麻が目を開く。

悠真は俯いたまま、握った手を見つめていた。

悠真「莉麻ちゃんがいなくなるかと思った」

声が震えている。

いつもなら絶対に人前で見せないような弱さ。

けれど今は、隠す余裕すらなかった。

莉麻「……ごめんね」

悠真「謝らないで」

少し強い声だった。

莉麻が驚いて悠真を見る。

悠真は涙を拭うこともせず、真っ直ぐ莉麻を見つめる。

悠真「俺を助けてくれたこと、怒ってるんじゃない」

莉麻「……うん」

悠真「でも……もう二度と、自分を犠牲にしないで」

莉麻の胸が締め付けられる。

悠真「俺、莉麻ちゃんが傷つくくらいなら……俺が怪我した方がよかった」

莉麻「そんなこと言わないで」

今度は莉麻が強く言った。

莉麻「悠真くんが傷つくの、嫌だから」

二人の視線が重なる。

一瞬、周りの音が消えたように感じた。

莉麻はもう分かっていた。

なぜ、あの瞬間に身体が動いたのか。

なぜ、悠真だけは絶対に助けたいと思ったのか。

――好きだから。

ただ、それだけだった。