大きな怪我はないように見える。

けれど、肩と腕を強く打ったのか、莉麻は苦しそうに顔を歪めていた。

奈津「莉麻ちゃん、大丈夫!?」

莉麻「……うん……」

そう答えようとした瞬間、痛みに顔が歪む。

春空「全然大丈夫じゃないじゃん……!」

春空の声が震える。

すぐにスタッフが駆け寄り、莉麻の状態を確認する。

スタッフ「救急車を呼んでください!」

その言葉に、悠真の顔が強張った。

悠真「……救急車……」

さっきまで動かなかった身体が、急に動き出す。

悠真は莉麻のそばにしゃがみ込み、その手を握った。

悠真「莉麻ちゃん……痛い?」

莉麻は小さく頷く。

莉麻「……ちょっとだけ」

悠真「ごめん……」

莉麻「え……?」

悠真の目から、また涙が落ちる。

悠真「俺のせいだ……俺を押したから……」

莉麻「違うよ……」

莉麻は痛みに耐えながら、首を横に振った。

莉麻「悠真くんが怪我しなくて……よかった」

その言葉を聞いた瞬間。

悠真は何も言えなくなった。

ただ、握った手に力を込める。

悠真「……どうして」

莉麻「え……?」

悠真「どうして、自分より俺を優先するの……」

声が震える。

莉麻は少しだけ悠真を見る。

そして――

さっき、パネルが倒れてきた瞬間のことを思い出した。

怖かった。

痛かった。

それでも悠真を助けたいってその気持ちしかなかった。

――やっぱり。

莉麻は胸の奥で、はっきりと答えを出す。

莉麻(……好きなんだ)

もう、否定できない。

悠真だから。

この人だけは、絶対に傷ついてほしくなかった。

そしてその気持ちは――

自分の身を差し出してでも守りたいと思うほど、大きくなっていた。