その日の撮影が終わる頃には、外はすっかり夕暮れになっていた。

スタッフたちが機材を片付ける中、莉麻も最後の確認を終えて、ほっと息を吐く。

莉麻「……今日も終わった」

その瞬間背後から、聞き慣れた声がした。

悠真「莉麻ちゃん」

振り返ると、悠真が立っていた。

衣装のまま、少し疲れた顔をしている。

けれど、莉麻を見るとすぐに笑った。

悠真「お疲れさま」

莉麻「悠真くんもお疲れさま。疲れたでしょ?」

悠真「うん。ちょっとだけ」

そう言って、悠真は少しだけ莉麻との距離を縮める。

そして――

悠真「……今日、一緒に帰ろ?」

莉麻は一瞬だけ目を瞬かせた。

莉麻「みんなで帰るんじゃないの?」

悠真「うん。みんなで帰るけど……その中で、莉麻ちゃんの隣がいい」

また胸が、きゅっとなる。

昨日まではこんな言葉を聞いても、ただ「甘えんぼだな」と思っていた。

でも今は違う。

その一言一言が、心に残ってしまう。

莉麻「……うん」

悠真「ほんと?」

莉麻「うん。隣、いいよ」

悠真が嬉しそうに笑った。

その笑顔を見た瞬間。

莉麻は、自分でも気づかないくらい小さく笑い返していた。

少し離れた場所で、その二人を見ていた奈津と春空。

春空は何も言わず、ただ二人を見つめる。

奈津も静かに息を吐いた。

――もう、莉麻の心は動き始めている。

それが二人にも、はっきり分かってしまった。