撮影が始まると、悠真はいつものように切り替えた。

カメラの前では、堂々としている。

さっきまで莉麻の肩に寄りかかっていた人とは思えないほど、表情も姿勢も完璧だった。

けれど撮影の合間にカメラが止まるたび、悠真の視線は自然と莉麻を探していた。

莉麻がスタッフと話していれば、その姿を目で追う。

飲み物を持っていれば、少し嬉しそうに笑う。

そして目が合えば――必ず笑う。

それに気づいた春空が、小さく息を吐いた。

春空「……分かりやすいなぁ」

奈津「本当にな」

二人の視線の先で、悠真が莉麻に近づいていく。

悠真「莉麻ちゃん」

莉麻「どうしたの?」

悠真「次の撮影まで少し時間ある?」

莉麻「うん。どうして?」

悠真「……一緒にいたい」

あまりにも真っ直ぐな言葉。

莉麻は一瞬、目を丸くした。

けれど、すぐに柔らかく笑う。

莉麻「……うん。いいよ」

その返事を聞いた瞬間、悠真の顔が嬉しそうに緩んだ。

その表情を見て、春空は少しだけ視線を逸らす。

春空「……あれ見たら、さすがに分かるよね」

奈津「うん」

悠真はもう、莉麻に遠慮していない。

好きだから近くにいたい。

好きだから笑ってほしい。

そんな気持ちを、隠すつもりがなくなっている。

奈津は静かに拳を握った。

――だったら。

自分も、もう遠慮はしない。

一方、莉麻はまだ知らない。

自分のすぐ近くで、三人の想いが少しずつ動き始めていることを。