その後もしばらく、悠真は莉麻の肩に寄りかかったままだった。

撮影の時間が近づいていることは分かっている。

それでも莉麻は、なかなか声をかけられなかった。

――もう少しだけ。

そう思ってしまう。

以前なら、こんなふうに悠真のことを考えることなんてなかった。

もちろん、昔からファンだったから、悠真のことは知っていた。

ステージの上で笑う姿も真剣な表情も歌っているときの横顔も何度も見てきた。

でも――

今、自分の肩に寄りかかっている悠真は、あの頃見ていた「アイドルの悠真」とは全然違う。

眠そうに目を閉じて少しだけ甘えて自分にだけ弱さを見せている。

莉麻はそっと悠真の顔を見つめた。

莉麻「……不思議」

悠真「……何が?」

また起きていたらしい。

莉麻「昔は、遠い人だったのになって」

悠真がゆっくり顔を上げる。

悠真「昔?」

莉麻「うん。私、悠真のこと……ずっと画面の向こうの人だと思ってたから」

悠真は少し照れたように笑った。

悠真「今は?」

その問いに、莉麻はすぐには答えられなかった。

少しだけ考えてから――

莉麻「……近い人」

その瞬間。

悠真の瞳が、嬉しそうに揺れた。

悠真「……そっか」

たった一言。

なのに、その表情があまりにも嬉しそうで。

莉麻の胸がまた、きゅっとなる。

――もっと、この顔を見たい。

そう思った。