「莉麻ちゃんだから」

その言葉が、いつまでも耳から離れなかった。

悠真はもう目を閉じている。

けれど莉麻は、さっきの言葉だけが何度も頭の中で繰り返されていた。

――私だから。

たったそれだけの言葉なのに。

胸の奥が、じわじわと熱くなる。

莉麻は誤魔化すように、悠真の前髪をそっと整えた。

莉麻「……ずるいなぁ」

小さな声で呟く。

すると、悠真が目を開けた。

悠真「……何が?」

莉麻「起きてたの?」

悠真「うん。ちょっとだけ」

悠真は眠そうに笑う。

そして、莉麻の手元を見る。

悠真「……触っててくれた?」

莉麻「え?」

悠真「髪」

莉麻は自分の手を見て、少し恥ずかしくなる。

無意識だった。

莉麻「……ごめん。嫌だった?」

悠真「ううん」

悠真はゆっくり首を横に振った。

悠真「もっとしてほしい」

まただ。

また、胸が跳ねる。

莉麻「……もう。ほんとに甘えんぼだね」

そう言いながらも、莉麻は手を止めなかった。

優しく髪を撫でる。

悠真は気持ちよさそうに目を細めた。

そして――

莉麻の肩に頬を寄せながら、小さく呟く。

悠真「莉麻ちゃんがいると……ちゃんと休める気がする」

その言葉を聞いた瞬間。

莉麻の胸の奥に、今までとは違う感情が広がった。

「心配だから」だけじゃない。

「守ってあげたい」だけでもない。

――この人にとって、自分が特別な存在でありたい。

そんな気持ちが、初めて芽を出していた。