午後は次の撮影まで少し時間が空き、メンバーたちはそれぞれ控室で休憩していた。

莉麻はテーブルに並べた資料を確認しながら、次の移動時間を計算している。

莉麻「……この時間なら、取材が終わってから移動しても間に合うかな」

そのとき背後から、控えめな声がした。

悠真「莉麻ちゃん」

振り返る。

そこには悠真が立っていた。

いつも通りに見える。

けれど――少しだけ顔色が悪い。

莉麻はすぐに気づいた。

莉麻「悠真くん、どうしたの?」

悠真「……なんでもない」

いつもの答え。

でも、莉麻には分かった。

悠真が本当に大丈夫なときと、無理しているときでは、ほんの少しだけ声の響きが違う。

莉麻「本当に?」

悠真「うん。大丈夫」

そう言いながら、悠真は笑う。

けれど、その笑顔はどこか弱かった。

莉麻は少し迷ってから、悠真の顔を覗き込む。

莉麻「……ちょっとだけ、休む?」

悠真の表情が、ほんの少しだけ緩んだ。

悠真「……いい?」

その一言に、莉麻の胸がまた揺れる。

他のメンバーなら「大丈夫」と言い切ってしまう悠真が。

自分には、素直に弱さを見せてくれる。

莉麻「うん。ここにいていいよ」

悠真「……ありがとう」

悠真は莉麻の隣の椅子に腰を下ろした。

そしてしばらく黙ったあと――

そっと、莉麻の肩へ頭を預けた。

莉麻の身体が、一瞬だけ固まる。

けれど嫌じゃない。

むしろ――

この距離が、妙に落ち着く。

悠真「……やっぱり、莉麻ちゃんの隣って落ち着く」

その言葉を聞いた瞬間。

莉麻は悠真の横顔を見つめた。

眠そうに目を閉じている悠真。

普段はステージの上で誰より輝いている人。

たくさんの人に見られて、たくさんの人を笑顔にしている人。

そんな悠真が――

今は、自分の肩に寄りかかっている。

莉麻「……悠真くん」

名前を呼ぶ声が、思ったより優しくなった。