ホテルを出て、撮影現場へ向かう車の中。

昨日までと変わらないはずの朝なのに、莉麻はなぜか落ち着かなかった。

理由は、自分でも分かっている。

――悠真。

昨日、みんなで話していたとき。

自分が昔からVELIXを応援していたこと。

その中でも、悠真のことを「かっこいい」と思っていたことや実際に近くで見たとき、その顔立ちの綺麗さに驚いたこと。

そんな話をしてから悠真の笑顔を見るたびに、昨日より少しだけ意識してしまう。

莉麻は窓の外へ視線を逃がした。

莉麻「……なんでこんなに気になるんだろ」

小さく呟いた声は、誰にも届かなかった。

そのとき隣の席から、悠真が眠そうな声を落とす。

悠真「莉麻ちゃん」

莉麻「ん?」

振り向くと、悠真が少しだけ目を細めてこちらを見ていた。

朝だからなのか、まだ眠いのか。

いつもの明るい表情とは違う、少し力の抜けた顔。

その顔を見た瞬間――

莉麻の胸が、また小さく跳ねた。

悠真「……今日、忙しい?」

莉麻「うん。午前中に撮影して、午後から取材。そのあと移動だね」

悠真「そっか……」

悠真は少しだけ黙った。

そして、莉麻の袖を指先で軽くつまむ。

ほんの一瞬。

けれど、その仕草があまりにも自然で。

莉麻は思わず目を瞬かせた。

悠真「……今日も、少しだけ莉麻ちゃんの近くにいていい?」

その言葉に、胸の奥がふわっと温かくなる。

以前なら、ただ「心配だからかな」と思っていた。

でも今は。

――どうして、私にだけこういうこと言うんだろう。

そんな疑問が、初めて浮かんだ。

莉麻「……うん。もちろん」

そう答えると、悠真は安心したように笑った。

悠真「よかった」

その笑顔を見て莉麻はまた、胸の奥がきゅっと締まるような感覚を覚えた。

――この顔を私は、もっと見ていたい。

そう思ってしまったことに、自分自身が一番驚いていた。