莉麻「もちろん、かっこいいって思ってたよ。」

悠真の頬がまた赤くなる。

けれど莉麻は少し考えてから、続けた。

莉麻「でもね。」

悠真「……うん。」

莉麻「実際に近くで見たとき、ちょっと驚いた。」

悠真「……何が?」

莉麻は少し恥ずかしそうに笑った。

莉麻「顔。」

悠真「……え?」

部屋の空気が一瞬止まる。

莉麻「ライブでは遠くから見てたから、かっこいいなって思ってたけど……実際にすごく近くで見たら、思ってた以上に綺麗な顔してて……こんなに綺麗なんだって、びっくりした。」

陽「うわー!」

春空「悠真、めっちゃ褒められてるじゃん。」

悠真は完全に固まっていた。

悠真「……莉麻ちゃん、それ……。」

莉麻「え?」

悠真「普通に恥ずかしい。」

莉麻「ご、ごめん!」

みんなが笑う。

春空も笑っていた。

けれど、その笑顔の奥では――。

――莉麻ちゃん、本当に悠真のことをずっと見てたんだ。

その事実が、じわじわと胸に残る。

自分も莉麻に振り向いてほしい。

だからこそ、悠真への気持ちだけは少し怖かった。

奈津も同じだった。

莉麻が「綺麗な顔」と言ったときの表情。

そのときの莉麻は、いつものように誰にでも向ける笑顔ではなかった。

ほんの少し照れていて。

それでいて、嬉しそうだった。

奈津は静かに思う。

――莉麻ちゃん。

もしかしたら、まだ自分でも気づいていないだけで。

悠真には、もう特別な何かがあるのかもしれない。

それでも、奈津は視線を逸らさなかった。

陽「じゃあ、昔ファンだったときの悠真と、今の悠真ってどう違う?」

莉麻「……全然違うよ。」

悠真「そんなに?」

莉麻「うん。」

莉麻は少し考える。

ファンだった頃ステージの上にいる悠真を遠くから見て、憧れていた。

そして今はすぐ隣で眠る悠真。

疲れたら自分に甘えてくる悠真。

体調が悪いと、自分にだけ本音を見せる悠真。

莉麻「昔は、すごく遠い人だったからかっこよくて……ずっと憧れてる人。でも今は……。」

莉麻は悠真を見る。

目が合う。

その瞬間、なぜか胸が少しだけ高鳴った。

莉麻「……近い。」

悠真は黙って莉麻を見る。

春空と奈津も、その二人を見つめていた。

二人とも、同じことに気づき始めていた。

莉麻はまだ恋だと気づいていない。

けれど――。

悠真に向ける表情だけが、少しずつ違ってきている。