陽「じゃあ、街で悠真に会ったときって、めちゃくちゃびっくりしたんじゃない?」

莉麻「うん。本当にびっくりした。」

莉麻は当時を思い出すように笑う。

莉麻「最初は、似てる人がいるのかなって思ったの。でも、よく見たら本当に悠真くんで……『えっ……本物?』ってなった。」

春空「そりゃなるよね。」

春空は笑いながら相槌を打つ。

けれど心の中では、別のことを考えていた。

――莉麻ちゃんにとって、悠真は最初から特別だったんだ。

自分は最近になって莉麻が気になるようになった。

奈津も、きっと同じ。

でも悠真は違う。

莉麻が「ファン」という立場で、ずっと前から見ていた人。

その事実が、どうしても引っかかる。

莉麻「だって、いつもライブで見てた人が普通に街にいるんだよ?」

陽「確かに!」

莉麻「しかも、私のことなんて知らないはずの悠真くんが、目の前で具合悪そうにしてて……。」

莉麻が笑いながら話す横で、奈津は悠真を見る。

悠真は何も言わず、莉麻の話を聞いている。

けれど、その目は明らかに嬉しそうだった。

――自分をずっと応援してくれていた。

その事実が、悠真にとっては特別なのだろう。

奈津は少しだけ目を伏せる。

それでも、莉麻への気持ちを諦めるつもりはなかった。

自分だって、莉麻に惹かれている。

だからこそ――。

この先、莉麻の心が誰に向くのか。

まだ分からない。

すると陽が、ふと思いついたように聞く。

陽「でもさ、莉麻ちゃん。」

莉麻「なに?」

陽「元々悠真のこと、かっこいいって思ってたんでしょ?」

莉麻「うん。」

即答。

悠真の顔が少し赤くなる。

春空は思わず笑った。

春空「悠真、よかったじゃん。」

悠真「……恥ずかしいんだけど。」

奈津「ふふ。」

みんなが笑う。

けれど春空は、笑いながらも胸の奥に小さな痛みを感じていた。

そして奈津もまた、莉麻の次の言葉を静かに待っていた。