その日の撮影を終えた夜、翌朝にも仕事があるため、メンバー全員と莉麻は同じホテルに泊まることになった。

夕食を終えて一つの部屋に集まると、陽が楽しそうに声を上げる。

陽「ねえ、今日みんなで語り合わない?」

莉麻「語り合う?」

陽「そう! 初めて会ったときの印象とか、昔の話とか!」

春空「いいじゃん。」

未来「こういうの久しぶりだね。」

伊澄「楽しそう。」

みんなで輪になって座り、それぞれが昔の話をしていく。

そして、ひと通り話し終えたところで、陽が突然莉麻を見る。

陽「じゃあ次、莉麻ちゃん!」

莉麻「私?」

陽「うん! 俺たちと初めて会ったときの印象聞きたい!」

莉麻は少し考えてから、笑った。

莉麻「みんな、最初から優しかったよ。」

春空「それだけ?」

莉麻「えっと……春空くんは思ってたより話しやすかったし、陽くんは最初からすごく明るかった。」

陽「でしょ?」

みんなが笑う。

すると春空が、ふと思い出したように莉麻を見る。

春空「じゃあさ悠真と初めて会ったときは?」

莉麻「……悠真くん?」

陽「それ聞きたい!」

奈津「俺も気になる。」

一斉に悠真へ視線が集まる。

悠真「……なんで俺だけ。」

春空「だって、莉麻ちゃんって悠真のこと元々知ってたんでしょ?」

莉麻は少し照れながら頷いた。

莉麻「うん。私、もともと悠真くんのファンだったから。」

その瞬間春空の笑顔がほんの少しだけ止まった。

――やっぱり。

知っていたつもりだった。

けれど、莉麻の口から改めて聞くと、思っていた以上に胸に響く。

「ファンだった」。

それはつまり、自分たちがまだ出会っていなかった頃から、莉麻の中には悠真がいたということ。

春空は何気ない顔を作りながら、悠真を見る。

悠真も驚いたように莉麻を見つめていた。

一方、奈津も静かに莉麻を見ていた。

莉麻が悠真について話すときだけ、声が少し柔らかくなる。

その変化を、奈津は見逃さなかった。

悠真「……俺のファンだったの?」

莉麻「うん。ライブもよく見に行ってたよ。」

悠真の表情が、少しずつ変わっていく。

その顔を見た春空の胸が、少しだけ苦しくなった。

――嬉しそう。

悠真がこんな顔をするのを見るのは、珍しくない。

けれど今は、その理由が莉麻だ。

奈津も静かに息を吐いた。

自分だって莉麻に大切にされている。

そう思っていた。

けれど、悠真には「自分たちが知らない過去」がある。

それが、少しだけ遠く感じさせた。