撮影現場に着くと、莉麻はいつものように仕事へ戻った。

衣装の確認。

スケジュールの調整。

スタッフとの打ち合わせ。

忙しく動き回っているうちに、さっきのことも忘れかけていた。

――けれど。

ふとした瞬間に、悠真の言葉が頭に浮かぶ。

『莉麻ちゃんが隣で寝てるの、なんか安心した。』

莉麻「……。」

また胸が小さく鳴る。

莉麻は自分の胸元に手を当てた。

莉麻「……なんでだろ。」

そこへ悠真がやってくる。

悠真「莉麻ちゃん。」

莉麻「……っ。」

びくっと肩が跳ねる。

悠真「え?」

莉麻「な、なんでもない!」

悠真「……?」

悠真が不思議そうに莉麻を見る。

その顔を見て、また胸が高鳴る。

莉麻は慌てて視線を逸らした。

まだ恋だとは思わない。

まだ、特別だとも言えない。

でも――。

悠真に声をかけられただけで、さっきまでとは違う反応をしてしまった。

その小さな変化に、莉麻自身がまだ気づいていなかった。