車が高速道路を走り始めてしばらく経った頃。

莉麻はまだ眠っていた。

悠真の肩に頭を預けたまま、時々車の揺れに合わせて小さく動く。

悠真はそのたびに、莉麻が起きないように身体を支えていた。

ふと、莉麻が小さく身じろぎする。

莉麻「……ん……」

悠真はすぐに莉麻を見る。

悠真「……莉麻ちゃん?」

けれど、莉麻は目を開けない。

ただ、眠ったまま悠真の服を指先で少しだけ掴んだ。

悠真の表情が、ふっと柔らかくなる。

悠真「……大丈夫。」

小さく呟いて、莉麻が楽に眠れるように肩を少し下げる。

その様子を、前の席から春空がちらりと見ていた。

けれど今度は何も言わなかった。

ただ、少しだけ寂しそうに窓の外を見る。

一方、奈津も二人の様子を見ていた。

そして――。

莉麻が悠真の肩で眠っていることよりも、

「莉麻が悠真のそばでは、こんなにも無防備になれる」

その事実が、胸に残っていた。