少し離れた席から、その光景を見ていた春空が気づく。

春空は一瞬だけ目を丸くした。

そして隣の奈津を見る。

奈津も気づいている。

莉麻が悠真の肩で眠っている。

悠真は起こすどころか、莉麻が落ちないように身体を少し傾けている。

春空「……。」

胸の奥が、少しだけ痛い。

けれど――。

それ以上に、気づいてしまった。

莉麻がこんなに無防備に誰かへ寄りかかって眠っている姿を、自分は見たことがない。

奈津も黙って前を向く。

その表情はいつも通りだった。

けれど、手元の資料を持つ指に、少しだけ力が入っている。

一方、悠真はそんな二人の視線にも気づかず、眠っている莉麻を見つめていた。

莉麻の髪が少しだけ顔にかかる。

悠真は迷ったあと――そっと指先で髪を払った。

悠真「……疲れてたんだね。」

小さな声。

莉麻には聞こえない。

けれど悠真は、それでも優しく笑った。

そしてその瞬間眠っていた莉麻が、無意識に少しだけ悠真の肩へ身体を寄せる。

悠真の目がわずかに見開かれる。

それから嬉しそうに目を細めた。

悠真「……ほんと、ずるいな。」

誰にも聞こえない声で、そう呟いた。