帰る時間になり、四人で建物を出る。

夜の空気が、少しひんやりしていた。

莉麻が歩きながら空を見上げる。

莉麻「今日は停電びっくりしたね。」

春空「……もう思い出したくない。」

莉麻「ふふっ。」

春空「笑わないでよ。」

莉麻「ごめんごめん。」

春空が少し拗ねたように莉麻を見る。

けれど、その表情はどこか嬉しそうだった。

莉麻が笑っている。

それだけでいい。

少し後ろを歩いていた奈津と悠真も、その二人を見ていた。

すると悠真が、ぽつりと呟く。

悠真「……俺、負けたくない。」

奈津が横を見る。

奈津「……何に?」

悠真は少しだけ黙ってから答えた。

悠真「……誰にも。」

奈津はその言葉を聞いて、静かに前を向く。

そして――。

奈津「……俺も。」

二人の視線が一瞬だけ交わる。

敵意があるわけではない。

それでも、互いの気持ちはもう分かっていた。

そして前を歩く莉麻は、そんな二人の会話を知らない。

春空もまた、莉麻の隣で歩きながら思っていた。

――俺だって。

――もっと莉麻ちゃんのそばにいたい。

夜道を歩く四人はその距離は近いのにそれぞれの胸の中には、誰にもまだ言えない想いが増えていた。