悠真が莉麻の手を離したあとも、莉麻はしばらくその場に立っていた。

莉麻「……悠真くん、今日はなんだか甘えんぼだね。」

冗談っぽく笑う莉麻。

その言葉に、悠真は少しだけ目を逸らした。

悠真「……そうかも。」

いつもなら「そんなことないよ」と誤魔化すところだった。

けれど今日は、否定しなかった。

莉麻のそばにいたい。

そう思っている自分を、もう隠す気にはなれなかった。

そこへ、春空がゆっくり近づいてくる。

春空「莉麻ちゃん。」

莉麻「なに?」

春空「もう帰る?」

莉麻「うん。そろそろ帰ろうかな。」

春空は一瞬だけ悠真を見る。

それから莉麻に視線を戻した。

春空「じゃあ……途中まで一緒に行っていい?」

莉麻「もちろん。」

その返事を聞いた瞬間、春空の顔が少し明るくなる。

春空「やった。」

莉麻「ふふっ。」

悠真はその二人を見つめた。

また胸の奥がざわつく。

けれど、今度は何も言わずにいられなかった。

悠真「……俺も行く。」

春空が振り返る。

春空「え?」

悠真「俺も一緒に帰る。」

莉麻は三人を見比べて、少しだけ首を傾げた。

莉麻「じゃあ、みんなで帰ろうか。」

その言葉に、悠真と春空は同時に頷いた。

けれど二人とも――

「二人きりがよかった」

そんな気持ちを、心の奥にしまい込んでいた。