その頃廊下の向こうから、誰かの足音が近づいてくる。

悠真「……莉麻ちゃん?」

暗闇の中から聞こえた悠真の声。

莉麻は春空を抱きしめたまま、そちらへ顔を向ける。

莉麻「悠真くん?」

悠真「いたんだ。」

悠真はスマホのライトをつけ、二人の姿を照らす。

その瞬間――悠真の動きが止まった。

莉麻に抱きしめられている春空。

そして、春空が莉麻をしっかり抱きしめ返している。

数秒何も言えなかった。

胸の奥が、また嫌なほどざわつく。

――また。

自分が見ていないところで、莉麻と誰かの距離が近くなっている。

けれど、すぐに春空が暗闇を怖がっていることに気づく。

だから、何も言えない。

悠真「……春空、大丈夫?」

春空「……うん。莉麻ちゃんがいるから。」

その一言が、悠真の胸に刺さった。

悠真「……そっか。」

笑おうとした。

けれど、うまく笑えなかった。

そのとき――反対側から奈津もやってくる。

スマホのライトで周囲を照らしながら、二人のところへ近づいてきた。

そして、同じ光景を見る。

奈津も一瞬だけ足を止めた。

莉麻に抱きしめられている春空。

それを見つめる悠真。

そして、その中心にいる莉麻。

奈津は何も言わず、静かに息を吐いた。

――また一人、莉麻ちゃんに近づいた。

そんなことを考えてしまった自分に、少しだけ驚く。