暗闇の中莉麻は、春空の背中をゆっくりと撫で続けていた。

さっきまで強張っていた春空の身体も、少しずつ力が抜けてきている。

けれど、莉麻の服を掴んだ手だけは離れなかった。

しばらくして――。

春空「……莉麻ちゃん。」

莉麻「なに?」

耳元で返ってきた優しい声に、春空は目を閉じたまま少しだけ顔を上げる。

暗くて莉麻の表情は見えない。

それでも、すぐ近くにいることだけは分かる。

春空「……もうちょっと、このままでいて。」

莉麻「うん。いいよ。」

迷いのない返事。

その瞬間、春空の腕にまた少し力が入った。

春空「……ありがとう。」

莉麻「怖い?」

春空「……うん。」

珍しく素直な返事だった。

莉麻は何も言わず、もう一度春空の頭を優しく撫でる。

莉麻「大丈夫。電気がつくまで、ずっとそばにいるから。」

春空「……莉麻ちゃんって、優しいね。」

莉麻「そうかな?」

春空「うん。」

春空は莉麻の肩に顔を埋めたまま、小さく笑った。

怖いはずなのに今は、不思議なくらい安心していた。

そして――このまま時間が止まればいいのに。

そんなことを、ほんの少しだけ思ってしまった。