仕事を終え、少しずつ人が帰り始めた頃。

莉麻はデスクの上に残っていた資料をまとめながら、ふと顔を上げた。

今日はツアー最終公演から続いていた慌ただしさもあり、メンバー全員がいつも以上に疲れている。

それでも、ようやく少し落ち着いてきた。

莉麻「……みんな、今日は早めに休めるといいな。」

そう呟いて、資料を整える。

すると――。

春空「莉麻ちゃん。」

後ろから声がして、振り返る。

そこには春空が立っていた。

莉麻「どうしたの?」

春空「もう帰る?」

莉麻「うん。これ片付けたら帰ろうかなって。」

春空「そっか。」

春空はそう言って、莉麻の隣の椅子に腰を下ろした。

少しだけ沈黙が流れる。

普段なら何気なく話しかけてくる春空が、今日は妙に静かだった。

莉麻「……春空くん、どうしたの?」

春空「んー……。」

春空は少し考えてから、莉麻を見る。

そして、ふっと笑った。

春空「今日、莉麻ちゃんと二人で話したかった。」

莉麻「私と?」

春空「うん。」

その言葉に、莉麻は少し驚く。

春空は普段から自然に距離が近い。

けれど今の声は、いつもより少しだけ真剣だった。

春空「……最近、莉麻ちゃん忙しかったじゃん。」

莉麻「そうだね。」

春空「だから、ちょっとだけ寂しかった。」

その言葉に、莉麻の表情が柔らかくなる。

莉麻「……ごめんね。」

春空「違う違う。謝ってほしいんじゃないよ。」

春空は笑いながら首を横に振る。

そして――ほんの少しだけ、莉麻との距離を縮めた。

春空「ただ……もうちょっと莉麻ちゃんと一緒にいたいなって思っただけ。」

その言葉が、静かな部屋に落ちた。

莉麻はまだ、その意味を深く考えていなかった。

けれど春空自身は――

もう、自分の気持ちを誤魔化し始めていた。