資料をまとめ終えた莉麻が立ち上がる。

莉麻「じゃあ、奈津くん。今日は少し休んでね。」

奈津「うん。」

莉麻が資料を抱えて歩き出そうとした、そのとき奈津がふと彼女の手首を掴んだ。

莉麻「……?」

莉麻が振り返る。

奈津自身も、なぜ掴んだのか分からないような顔をしていた。

けれど――離したくなかった。

ほんの一瞬だけ。

奈津「……ありがとう。」

莉麻「ううん。」

莉麻は柔らかく笑う。

そして奈津の手からそっと自分の手首を抜いた。

その光景を見ていた悠真は、とうとう耐えきれなくなったように立ち上がった。

悠真「……莉麻ちゃん。」

莉麻が振り向く。

莉麻「悠真くん?」

悠真は少し迷ったあと、まっすぐ莉麻を見る。

悠真「俺も……ちょっと一緒にいてほしい。」

その言葉に莉麻が目を瞬かせる。

莉麻「もちろん。どうしたの?」

悠真「……なんとなく。」

本当は違う。

奈津ばかり莉麻の優しさをもらっているのが、悔しかった。

自分も莉麻のそばにいたかった。

その少し後ろで、春空も立ち上がる。

春空「じゃあ俺も。」

莉麻「春空くんも?」

春空「うん。」

春空はいつものように笑った。

けれど、その笑顔の奥には――誰にも見せたくない、少しだけ悔しそうな感情が隠れていた。

奈津はそんな二人を見つめる。

そして静かに思う。

――やっぱり自分だけじゃない。

莉麻を大切に思っているのは。

その瞬間、四人の間に今までとは少し違う空気が流れ始めた。