帰る。

その言葉が耳に入った瞬間だった。

体が先に動いていた。

悠真の手が、莉麻の腕をそっと掴む。

莉麻「……悠真くん?」

自分でも驚いた。

何をしてるんだろう。

いつもの自分なら。

「ありがとう。」

「もう大丈夫だから。」

そう笑って送り出していた。

弱っている姿なんて、誰にも見せたくなかった。

心配もかけたくなかった。

それなのに今日は違った。

手を離したくないと思ってしまった。

隣にいてほしいと、思ってしまった。

悠真は少しだけ視線を逸らし、小さく息を吐く。

悠真「……もう少しだけ。」

かすれた声が静かな部屋に溶ける。

悠真「そばに、いてくれない?」

その言葉を口にした瞬間、自分が一番驚いていた。

こんなお願い初対面の女の子にするなんて。

ありえない。

でも今だけは、一人になりたくなかった。

莉麻は掴まれた腕を見つめ、それから悠真の少し不安そうな表情へ視線を移す。

その顔は、テレビの中で笑うアイドルとはまるで違っていた。

誰にも見せない。

きっと、誰も知らない。

――悠真の素顔だった。