悠真と春空は二人とも、まだそこにいる。

そして今――。

莉麻の手が奈津のおでこに触れている。

それを見た瞬間、悠真の表情が固まった。

悠真「……。」

胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。

――近い。

自分だって、莉麻に心配してもらったことは何度もある。

けれど今の奈津を見ると、どうしても思ってしまう。

「俺もあんなふうに、莉麻ちゃんに触れてほしい」

そんな気持ちが、抑えられない。

隣では春空も黙っていた。

いつもの柔らかい笑顔は消えている。

春空「……あれも、ずるいな。」

小さな声。

悠真が春空を見る。

悠真「……うん。」

二人とも、同じ気持ちだった。

悔しい。

莉麻が奈津を心配していることも。

奈津がそれを当たり前みたいに受け入れていることも。

そして何より――その距離に、自分たちが入れないことが。

テーブルでは、莉麻が資料を閉じながら奈津を見る。

莉麻「今日はちゃんと休んだほうがいいよ。」

奈津「でも、まだ確認することが――」

莉麻「それは私がやっておくから。」

奈津「……莉麻ちゃん。」

莉麻「奈津くんが倒れたら、みんな困るでしょ?」

そう言って微笑む。

奈津はしばらく莉麻を見つめた。

その顔に、少しだけ困ったような笑みが浮かぶ。

奈津「……莉麻ちゃんには敵わないな。」

その言葉を聞いた悠真の胸が、またズキッと痛んだ。

春空も、視線を逸らす。

――自分も、あんなふうに莉麻に心配されたい。

二人の中に、同じ願いが生まれていた。