資料を広げたテーブルの前で、奈津と莉麻は並んで座っていた。

ツアー後の今後のスケジュールを確認しながら、莉麻が一枚ずつ資料をめくっていく。

莉麻「ここ、次の撮影が朝からになってるね。」

奈津「うん。移動時間を考えると、前日の夜にはこっちに入っておいたほうがいいかも。」

二人で予定を確認しているものの、奈津の反応が少し鈍い。

さっき莉麻の肩で休んだとはいえ、ほんの数分程度だった。

莉麻がふと横を見ると奈津は資料を見つめながら、眉間に皺を寄せていた。

莉麻「……奈津くん。」

奈津「ん?」

莉麻「さっき少し休んだくらいじゃ、やっぱりちゃんとは休めないよね?」

奈津「……まあ、そうかも。」

奈津が苦笑する。

その表情を見て、莉麻は少し心配そうに彼の顔を覗き込んだ。

莉麻「熱はない?」

奈津「熱?」

莉麻「うん。疲れてるし、念のため。」

そう言って莉麻は、何の迷いもなく手を伸ばした。

白い指先が、奈津のおでこにそっと触れる。

奈津「……っ。」

突然のことに、奈津の身体がわずかに固まった。

近い。

さっき肩に寄りかかっていたときよりも、ずっと意識してしまう距離。

莉麻はそんな奈津の反応にも気づかず、真剣な顔で熱を確認している。

莉麻「……うん。熱はなさそう。」

その優しい声に、奈津は一瞬だけ目を伏せた。

――こんなの、好きになるなっていうほうが無理だ。