結局、莉麻は奈津と一緒に少し離れた場所へ移動することになった。

その背中を見送る悠真。

隣に立つ春空。

二人とも、しばらく何も言わなかった。

やがて春空が、ぽつりと口を開く。

春空「……悠真。」

悠真「なに?」

春空「莉麻ちゃんのこと、好きでしょ。」

悠真の表情が固まった。

心臓が一度、大きく鳴る。

誤魔化そうと思えば、できた。

けれど――。

春空の顔を見て、やめた。

悠真「……うん。」

小さな声だった。

けれど、はっきりとした答え。

春空は驚かなかった。

ただ少しだけ目を伏せる。

春空「そっか。」

悠真「……春空も?」

春空は答えなかった。

数秒の沈黙のあと、困ったように笑う。

春空「……俺も、たぶん。」

その言葉に、悠真は黙り込む。

嫌なはずなのになぜか、少しだけ分かる気がした。

春空が莉麻のそばにいるときの自然な距離感。

何気なく笑いかけるところ。

時々、当たり前みたいに莉麻の隣にいるところ。

それを見て、自分も何度も気になっていた。

だからこそ――。

悠真「……奈津もだよね。」

春空が、奈津と莉麻のいる方向を見る。

春空「……たぶんね。」

四人の気持ちは、まだ交わっていない。

けれど――少なくとも三人は、同じ女の子を特別に見始めていた。

そしてその頃少し離れた場所では、莉麻が奈津の隣で資料を覗き込んでいる。

奈津は資料を見ながら、ちらりと莉麻を見る。

その横顔には、もう隠しきれないほどの優しさが滲んでいた。

莉麻はまだ知らない。

自分が知らないところで――

三人の気持ちが、少しずつ動き始めていることを。