悠真に袖を掴まれたまま、莉麻は不思議そうに彼を見つめていた。

さっきまで奈津のそばにいた莉麻を見て、胸の奥がざわついていたはずなのに。

こうして自分の袖を掴んでいると、ほんの少しだけ安心する。

けれど――その安心感の裏側には、今までにはなかった感情があった。

「自分のそばにいてほしい」

そんな独占欲。

悠真自身も、こんな気持ちになるなんて思っていなかった。

莉麻「悠真くん、まだ体調よくない?」

悠真「……ううん。大丈夫。」

反射的にいつもの言葉が出る。

けれど莉麻は、少しだけ眉を下げた。

莉麻「また“大丈夫”って言ってる。」

悠真「……。」

図星だった。

莉麻は小さく笑って、悠真の顔を覗き込む。

莉麻「無理してたらちゃんと言ってね。」

その優しい声に、悠真の胸がきゅっと締まる。

悠真「……莉麻ちゃんってさ。」

莉麻「うん?」

悠真「誰にでも、こういうこと言う?」

莉麻「え?」

悠真は、自分でも何を聞いているのか分からなくなった。

ただ――知りたかった。

自分だけなのか。

それとも、奈津にも、春空にも、同じように優しいのか。

けれど莉麻は少し考えてから、首を傾げる。

莉麻「……うーん。みんな大切だから、心配にはなるけど……。」

そこで莉麻は、悠真を見つめた。

莉麻「悠真くんが無理してるときは、特に心配になるかも。」

その瞬間悠真の心臓が、大きく跳ねた。