少しして奈津が莉麻から離れる。

奈津「……ありがとう。もう大丈夫。」

莉麻「本当に?」

奈津「うん。かなり楽になった。」

そう言って立ち上がる奈津。

莉麻も一緒に立ち上がった。

その瞬間――。

廊下の向こうから、悠真と春空が歩いてくる。

莉麻は二人を見つけると、いつものように柔らかく笑った。

莉麻「あ、悠真くん。春空くん。」

その笑顔を見た瞬間悠真の胸がまた高鳴る。

やっぱり好きだ。

どれだけ奈津との距離が近くても。

誰かに嫉妬して苦しくなっても。

莉麻を見た瞬間、好きという気持ちだけは消えてくれない。

むしろ――もっと強くなっていく。

悠真「……莉麻ちゃん。」

莉麻「ん?」

一瞬、言いたくなる。

――俺も、莉麻ちゃんのそばにいたい。

――俺だって、もっと頼ってほしい。

でも、今は言えなかった。

奈津もそこにいる。

春空もいる。

そして莉麻は、何も知らずに自分を見ている。

だから悠真は、いつものように小さく笑った。

悠真「……探してた。」

莉麻「私を?」

悠真「うん。」

その一言だけ。

けれど、莉麻の表情が少し柔らかくなる。

莉麻「どうしたの?」

悠真は少しだけ迷ってから、莉麻の袖をそっと掴んだ。

悠真「……ちょっとだけ、一緒にいてほしくて。」

莉麻は驚いたように瞬きをする。

そして――優しく笑った。

莉麻「うん。いいよ。」

その瞬間今度は奈津が、静かに二人を見る。

春空もまた、何も言わずにその光景を見つめていた。

四人の中でまだ誰も、はっきりとは言葉にしていない。

それでも―少しずつ、同じ場所に向かって気持ちが動き始めていた。