奈津の頭が、まだ莉麻の肩にそっと預けられている。

莉麻は何も言わず、彼の髪をゆっくり撫で続けていた。

その光景を、少し離れた廊下から二人の人影が見つめていた。

悠真と春空だった。

二人とも、莉麻を探してここまで来た。

けれど――声をかけることができなかった。

悠真は、無意識に足を止める。

視線の先にいる莉麻と奈津。

莉麻の肩に頭を預け、安心したように目を閉じている奈津。

そして、その髪を優しく撫でている莉麻。

その距離の近さに、胸の奥がズキッと痛んだ。

悠真「……。」

何も言わない。

ただ、握っていたスマホに少しだけ力が入る。

――嫌だ。

その言葉が、頭の中に浮かんだ。

莉麻が誰かに優しくすることなんて、今まで何度も見てきた。

それなのに奈津が莉麻に寄りかかっているだけで、こんなにも苦しくなる。

悠真「……俺、こんなに嫉妬するんだ。」

小さく呟いた声は、自分にしか聞こえないほどだった。

その隣では、春空も黙っていた。

いつものように笑っているわけでもない。

ただ、少しだけ目を細めて、二人を見つめている。

春空もまた、莉麻のことが気になっていた。

まだ自分の気持ちを「好き」とはっきり言葉にしていなかっただけ。

けれど――。

春空「……なんか、嫌だな。」

ぽつり。

その声に、悠真が隣を見る。

二人の視線が一瞬だけぶつかった。

そこには、いつものメンバー同士の空気とは違うものがあった。

――同じ人を見ている。

二人とも、なんとなくそれに気づいてしまった。