頭を撫でられる。

ただ、それだけなのに奈津は目を閉じた。

こんなふうに誰かに甘えることなんて、いつ以来だろう。

いつもなら自分がしっかりしなければと思う。

弱音を吐くより、周りを支える。

疲れていても笑う。

それが当たり前だった。

なのに莉麻の前では、どうしてこんなに力が抜けるんだろう。

莉麻「少し寝てもいいよ。」

奈津は返事をしようとした。

でも声にする前に、また莉麻の肩へ身体を預けた。

奈津「……もうちょっとだけ。」

莉麻「うん。ゆっくり休んで。」

その声が優しくて頭を撫でる手も温かくて奈津は完全に力を抜いた。

そして胸の奥に、はっきりとした感情が生まれる。

――この人に、もっとこうしていてほしい。

もっと自分を見てほしい。

もっと自分のことを心配してほしい。

もっと近くにいたい。

それだけじゃない。

莉麻が誰かに笑いかけると、気になる。

誰かと楽しそうに話していると、目で追ってしまう。

そして悠真が莉麻のそばにいると、少しだけ苦しくなる。

その理由が、もう分からないふりはできなかった。

――俺、莉麻ちゃんのこと。

好きなんだ。

昨日までの「気になる」なんていう曖昧なものじゃない。

もっと深い。

もっと、どうしようもない。

恋だった。

奈津は目を閉じたまま、莉麻の肩へ少しだけ頭を預け直す。

莉麻は何も知らず、優しく髪を撫で続けている。

その優しさが、今は嬉しくて仕方がなかった。

奈津「……莉麻ちゃん。」

莉麻「ん?」

奈津は少しだけ迷ってから、小さく呟く。

奈津「……もう少し、このままでいていい?」

莉麻は少し驚いたあと、柔らかく笑った。

莉麻「うん。もちろん。」

その答えを聞いた瞬間奈津は、もう完全に莉麻への想いから逃げられなくなっていた。