病院を出た三人は、そのまま事務所へ戻ることになった。

車に乗り込むと、悠真は後部座席へ座る。

莉麻も隣へ座ろうとしたけれど、その前に奈津が口を開いた。

奈津「莉麻ちゃん、こっち座る?」

奈津が自分の隣を指す。

莉麻は一瞬迷ったあと、頷いた。

莉麻「うん。」

その様子を見た悠真の胸が、また少しざわつく。

昨日からずっと感じている、この嫌な感覚。

奈津が莉麻のことを気にしている。

そして莉麻も、奈津には自然に笑いかける。

分かっている。

二人とも何も悪くない。

それなのに悠真は視線を窓へ向けた。

すると、前の席から春空が振り返った。

春空「悠真、大丈夫?」

悠真「うん。大丈夫。」

春空「昨日あんなことあったんだから、今日は寝てていいからね。」

悠真「ありがとう。」

春空が前を向いて車が走り出す。

しばらくすると、莉麻が振り返った。

莉麻「悠真くん。」

悠真「ん?」

莉麻「眠かったら寝てね。」

悠真「……うん。」

その一言だけで、少しだけ気持ちが落ち着いた。

やっぱり莉麻に声をかけてもらえるだけで嬉しい。

それを自覚してしまった今もう以前みたいに、ただの「安心する存在」だとは思えなかった。