しばらくすると、病室のドアが開いた。
奈津が戻ってくる。
奈津「待たせた。」
莉麻が顔を上げる。
莉麻「おかえり。」
その何気ない一言に、奈津が少し笑う。
奈津「ただいま。」
そのやり取りを見ていた悠真の胸が、またざわつく。
……なんで。
「おかえり」なんて。
そんな普通の会話なのに嫌だと思ってしまう。
悠真は自分でも驚きながら、莉麻を見る。
すると莉麻がこちらへ近づいてきた。
莉麻「悠真くん。」
悠真「ん?」
莉麻「もう少ししたら先生が来るって。退院できるかもしれないって。」
悠真は頷く。
悠真「そっか。」
その瞬間、奈津が笑った。
奈津「よかったな。」
悠真も笑い返す。
けれどその胸の奥では、別のことを考えていた。
病院を出たらまた莉麻と一緒にいられる。
そう思うと嬉しい。
でも奈津もいる。
これから仕事で、三人一緒になることも増える。
そう考えた瞬間、胸が落ち着かなくなった。
――俺、どうしたいんだろう。
答えはもう分かっている。
莉麻に近くにいてほしい。
自分を見ていてほしい。
そして誰かに取られたくない。
悠真はそっと莉麻を見る。
莉麻は奈津と話しながら笑っている。
その横顔を見つめながら、悠真は小さく息を吐いた。
好き。
ちゃんと好きなんだ。
今まで曖昧だった感情が、もうはっきり形になっていた。
そして同時に初めて知った「嫉妬」という感情に、悠真は少し戸惑っていた。
悠真「……莉麻ちゃん。」
莉麻「ん?」
呼ばれて振り返る莉麻。
悠真は一瞬迷ってから、ほんの少し笑った。
悠真「……なんでもない。」
まだ今は言えない。
でもいつかちゃんと伝えたい。
そんな気持ちが、悠真の中に芽生え始めていた。



