奈津が莉麻へ朝食を渡したあとも、三人はそのまま病室で話していた。
悠真はベッドの上。
その横の椅子に莉麻。
そして向かい側に奈津が座っている。
莉麻は買ってきてもらった朝食を少しずつ口に運びながら、奈津と話していた。
莉麻「昨日のライブ、本当にすごかったね。」
奈津「最後だったからな。みんな気合い入ってたし。」
莉麻「うん。客席から見たら、もっとすごかったんだろうな。」
奈津が少し笑う。
奈津「莉麻ちゃん、昨日ちゃんと見てた?」
莉麻「途中からは。仕事しながらだったけど……。」
奈津「じゃあ、今度はちゃんと客席から見てみたら?」
莉麻「そんなことしたら、仕事忘れそう。」
二人で笑う。
その様子を、悠真は黙って見ていた。
さっき自覚したばかりの気持ちが、また胸の奥を刺激する。
奈津が笑う。
莉麻も笑う。
ただそれだけなのに。
どうしてこんなに落ち着かないんだろう。
昨日までなら、二人が話していても何とも思わなかった。
むしろ、仲良くなってくれたことを嬉しいと思っていたはずなのに。
今は。
莉麻の笑顔が自分以外の誰かに向けられていることが、嫌だった。
悠真は無意識に布団を握る。
その小さな動きに、莉麻が気づいた。
莉麻「悠真くん?」
悠真はすぐに顔を上げる。
悠真「……ん?」
莉麻「どうしたの?」
悠真「なんでもない。」
そう答えたけれど。
胸の中は、全然なんでもなくなかった。



