しばらく二人で並んで座っていると、病室の中から小さな物音がした。
莉麻がすぐに立ち上がる。
莉麻「悠真くん、起きたかな。」
立ち上がった莉麻を見て、奈津も続こうとする。
けれど、その前に。
莉麻が振り返った。
莉麻「奈津くんは、ここで少し休んでて。」
奈津「でも……。」
莉麻「大丈夫。私が見てくるから。」
柔らかく笑う。
その笑顔を見て、奈津は何も言えなくなった。
奈津「……分かった。」
莉麻が病室へ入っていく。
閉じたドアを見つめながら、奈津は一人、椅子へ座り直した。
そして、背もたれに身体を預ける。
目を閉じる。
頭の中に、さっきの莉麻の笑顔が浮かぶ。
――なんでだろう。
疲れているから、変なことを考えているだけかもしれない。
そう思おうとする。
けれど。
さっき「大丈夫?」と心配された時。
胸の奥が、ほんの少し嬉しかった。
悠真のことを心配していたはずなのに。
いつの間にか。
自分も、この子に心配してほしいと思ってしまった。
奈津「……参ったな。」
小さく呟いて、片手で顔を覆う。
まだ自分でも、はっきりとは分からない。
ただ莉麻のことが、少し気になり始めている。
病室の向こうでは、莉麻が悠真に優しく声をかけている。
その声を聞きながら。
奈津は、自分の胸に生まれた小さな変化を、まだ誰にも言えないまま静かに抱えていた。



