「車、来ました。」
スタッフの声がする。
莉麻が振り返る。
莉麻「じゃあ、行こう。」
悠真はゆっくり身体を起こす。
けれど、立ち上がった瞬間。
足元が少しふらついた。
莉麻「危ない。」
すぐに腕を支える。
悠真も反射的に莉麻の肩へ手を置いた。
悠真「……ごめん。」
莉麻「謝らなくていいよ。」
奈津も反対側へ回る。
奈津「俺も支える。」
悠真は二人に支えられながら、ゆっくり歩き出す。
救護室を出る。
長い廊下を歩く。
さっきまでここを、ステージへ向かうために何度も走っていた。
それなのに今は、一歩ずつ進むだけでも精一杯だった。
会場の外へ出ると、夜風が頬に触れる。
悠真が少しだけ目を閉じた。
莉麻はその横顔を見ながら、そっと声をかける。
莉麻「大丈夫?」
悠真「……うん。莉麻ちゃんがいるから。」
その言葉に、莉麻の胸が小さく跳ねた。
隣にいた奈津も、その言葉を聞いて悠真を見る。
けれど、何も言わなかった。
ただ静かに二人を見つめる。
そして三人は、病院へ向かう車へ乗り込んだ。
ツアー最後の夜。
華やかなステージを終えたその先で――
三人の関係は、少しずつ変わり始めていた。



