救護室には、静かな時間が流れていた。

さっきまで会場を揺らしていた歓声が、嘘みたいに遠い。

莉麻はベッドの横に座ったまま、悠真の顔を見つめていた。

少しずつ呼吸は落ち着いている。

けれど、まだ目は覚まさない。

奈津たちはスタッフと今後の移動について話していた。

奈津「病院には行った方がいいですよね。」

スタッフ「念のため、そうします。」

その言葉に、莉麻も顔を上げる。

やっぱり病院。

当然だと思う。

あれだけ苦しそうだったんだから。

しばらくして、救護スタッフが悠真の状態を確認する。

「意識が戻るまでは、無理に起こさない方がいいでしょう。」

莉麻は小さく頷いた。

その時ベッドの上で、悠真の指がまた微かに動いた。

莉麻がすぐに手元を見る。

そしてゆっくりと、悠真の指が何かを探すように動く。

莉麻はそっと手を差し出した。

指先が触れる。

すると悠真の指が、莉麻の手を弱く握った。

莉麻「……いるよ。」

眠ったままの悠真に、優しく声をかける。

莉麻「ここにいるからね。」

握る力が、ほんの少しだけ強くなった。