しばらくすると、スタッフが救護室へ入ってきた。
「今のところ、少しずつ落ち着いています。」
その言葉に、莉麻はようやく少しだけ息を吐いた。
でも安心しきることはできない。
今日だけじゃない。
ここ最近ずっと、ツアーのために練習を重ねていた。
最後まで走り切ろうとしていた。
きっと、限界なんてとっくに超えていたんだ。
莉麻はベッドの横に置かれた椅子へ座る。
その時悠真の指が、ほんの少し動いた。
莉麻が顔を上げる。
莉麻「……悠真くん?」
まぶたが微かに動く。
けれど、まだ目は開かない。
莉麻は思わず身を乗り出した。
莉麻「悠真くん聞こえる?」
ほんの少しだけ、悠真の眉が動いた。
それだけだった。
でも生きている。
ちゃんとここにいる。
そのことが分かっただけで、胸がいっぱいになった。
莉麻は目元に浮かんだ涙をそっと拭う。
そして、眠っている悠真へ小さく笑いかけた。
莉麻「……お疲れさま。最後まで、本当によく頑張ったね。」
静かな救護室。
外では、まだ会場の片付けが続いている。
ツアー最後のライブは終わった。
けれど莉麻にとっては、まだ終わっていなかった。
目を覚ますまで。
ここにいる。
そう決めて、莉麻は悠真のそばに座り続けた。



