救護室へ運ばれた悠真は、ベッドへ寝かされた。

スタッフが慌ただしく動く。

莉麻はベッドの横から離れられなかった。

さっきまであんなに苦しそうだった呼吸も、今は少し落ち着いている。

それでも目を開けない。

莉麻は握った手をそっと離した。

額には汗が残っている。

髪も汗で濡れている。

ステージで見せていた笑顔とは、全然違う。

ただ静かに眠っている。

莉麻「……頑張りすぎだよ。」

小さく呟く。

その声に、奈津が隣へ立った。

奈津「莉麻ちゃん。」

莉麻が顔を上げる。

奈津「ありがとう。」

その言葉に、莉麻は首を横に振った。

莉麻「私は何も……。」

奈津「違う。倒れる前に気づいたのも、受け止めたのも莉麻ちゃんだ。」

奈津は眠っている悠真を見る。

奈津「もし莉麻ちゃんが気づかなかったら……。」

そこまで言って、口を閉じた。

考えたくない。

莉麻も同じだった。

悠真が倒れた瞬間。

腕の中へ落ちてきた重さ。

あの時の怖さが、まだ身体に残っている。

莉麻はもう一度、悠真の手を見る。

さっきまで自分の服を掴んでいた手。

その指先にそっと触れる。

莉麻「……目、覚ましてくれるよね。」

返事はない。

ただ、静かな寝息だけが聞こえていた。