やがて車がゆっくりと減速する。
窓の外に、大きな会場が見えてきた。
「……着いた。」
誰かが呟く。
莉麻も窓の外へ目を向けた。
大きな看板。
今日の公演名。
そして、その周りにはすでにたくさんのファンの姿が見える。
胸が高鳴る。
ここが、最後のステージ。
車が関係者入口へ入っていくと、メンバーも一気に仕事の顔へ切り替わっていく。
奈津が資料を確認する。
未来がイヤモニを確認する。
陽が「よし」と気合いを入れる。
伊澄も静かに笑う。
そして悠真は、窓の外を一度見てから、深く息を吐いた。
その横顔を見ていると、莉麻も自然と背筋が伸びた。
車が完全に止まる。
ドアが開く。
スタッフが声をかける。
「到着しました!」
メンバーが順番に降りていく。
莉麻も荷物を確認して車を降りた。
すると、少し先を歩いていた春空が振り返る。
春空「莉麻ちゃん。」
莉麻「どうしたの?」
春空は笑った。
春空「今日、楽しもうね。」
その一言に莉麻も笑う。
莉麻「うん。」
最後の一日。
最後のステージ。
そして――
この日が、みんなの気持ちを少しずつ動かしていく一日になることを、まだ誰も知らなかった。



