会場が近づくにつれて、車内の空気も少しずつ変わっていった。
眠っていたメンバーも起き始め、陽がスマホを確認する。
陽「もうすぐ着くって。」
奈津「じゃあ、到着したらすぐ準備だな。」
未来「今日が最後か。」
その言葉に、全員が少しだけ黙る。
誰も口にはしないけれど。
やっぱり寂しいんだ。
莉麻はそんなみんなを見ながら、ふっと笑った。
その時、春空が莉麻の方へ身体を向ける。
春空「莉麻ちゃん。」
莉麻「ん?」
春空「今日のライブ。絶対楽しんでね。」
莉麻「うん。」
春空「スタッフだからって、仕事のことばっか考えなくていいから最後くらい、ちゃんと客席も見て。」
莉麻は少し驚いた。
確かに。
今までずっと、ステージ袖から進行やメンバーの体調ばかり気にしていた。
でも今日は最後のライブ。
自分も、この時間をちゃんと覚えておきたい。
莉麻「……分かった。ありがとう。」
春空は嬉しそうに笑った。
春空「約束ね。」
小指を差し出す。
莉麻は少し笑って、その小指に自分の小指を絡めた。
ほんの一瞬。
それだけなのに、二人の間に小さな約束ができた。



